近年、異常気象による大規模な浸水被害が全国各地で発生しています。
地下駐車場や低地での冠水被害が相次ぎ、三重県では160台以上が水没した事例も報告されています。
その影響で、中古車市場にも「冠水車(すいぼつしゃ)」が流通するリスクが高まっています。
この記事では、冠水車を誤って購入しないための見極め方や、
もし被害に遭ってしまった場合の対処法・法的保護策までを、専門家の知見を交えてわかりやすく解説します。
1. 冠水車を購入・所有する際の重大なリスク
専門家は口を揃えて「価格差がよほど大きくない限り、冠水車は選ばないべき」と警告しています。
見た目がきれいでも、内部に深刻なダメージが潜んでいることが多いのです。
電気系統のトラブルと故障リスク
車は「パソコン以上に精密な機械」といわれるほど電子制御が進んでいます。
そのため、一度でも水に浸かると以下のような問題が発生します。
- 電気系統の不具合: ヒューズボックスやコンピューターユニット(ECU)などが故障しやすく、時間が経ってから不具合が出ることもあります。
- 錆び・腐食の進行: 通常の車よりも錆が進行しやすく、足回りやフレームが急速に劣化します。
- カビ・異臭: シートを外して清掃しても湿気が残り、カビ臭や腐敗臭が再発するケースが多いです。
保証・下取り価格の大幅な損失
- 保証の対象外: メーカーや販売店の保証(2〜10年保証など)でも、水害による損傷は対象外となる場合がほとんどです。
- 再販価値がゼロ: 非冠水車より50万円安く買えても、数年後の下取りは「価値なし」になるリスクがあります。結果的に、長期的には大損することになります。
- 長期使用の難しさ: 電装系や配線トラブルが頻発し、修理費がかさむため、乗り続けることが困難になります。
2. 中古車購入時にチェックすべき「冠水車の見極め方」
悪質な販売業者によっては、冠水車であることを隠して販売されるケースもあります。
以下のチェックポイントを押さえておくことで、かなりの確率で見抜くことが可能です。
- 車内のニオイを確認する
→ カビ臭・土臭・湿ったような異臭がする場合は要注意[6]。 - シートベルトの“潮目”をチェック
→ ベルトを最後まで引き出し、水のラインやシミが残っていないか確認します[5,6]。 - フロアマット・内張りの裏を確認
→ フロア下やドア内張りの裏側に「砂・泥・水跡」が残っていないか。特にリアシート下のレールは要チェック[5]。 - 下回りの錆び・泥を確認
→ 普段の走行では付着しない場所(マフラー上部やフレーム内部)に錆や泥がある場合、冠水車の可能性大[5]。
3. 冠水被害に遭ったときの正しい対処法と保険の重要性
車両保険への加入は「必須」
台風や大雨などによる冠水は、自分の努力では防ぎようがありません。
車両保険に入っていなければ、修理費や買い替え費用を全額自己負担することになります[2]。
- 一般の任意保険(対人・対物など)では水害は補償対象外。
- 車両保険があれば、修理または買い替え費用を補償してもらえます。
- 洪水リスクのある地域では「自然災害補償付き車両保険」がおすすめです。
乗り換えを検討すべき理由
保険で補償が受けられる場合、愛着があっても新しい車に乗り換えるのが現実的です。
フレーム洗浄や全分解修理(オーバーホール)は技術的に可能でも、
高額な費用と再発リスクを考えると、安全性・経済性の両面で乗り換えが賢明です。
冠水車の流通経路と消費者保護制度
保険会社が引き取った冠水車は、業者オークションで再販されることがあります。
ただし、現在はSNSの普及により「冠水車隠し販売」は減少傾向にあります。
海外輸出が主な流通先
冠水車の多くは、修理コストが安く部品需要の高い東南アジア・中東・アフリカなどへ輸出されています。
契約不適合責任による返品・返金
- 購入後1年以内であれば、契約不適合責任に基づいて返品・返金が可能[6]。
- 1年以上経過していても、裁判で「冠水車であった」と認められれば、使用分を差し引いて返金を受けられるケースもあります。
トラブル発生時の相談窓口
- 公正取引委員会
- 消費生活センター
- 自動車公正取引協議会
- 専門業者(例:バディカダイレクト)による無料セカンドオピニオンも有効。
まとめ:安さに惑わされず「信頼できる販売店」を選ぶことが最重要
冠水車は、表面上はきれいでも内部のダメージは深刻です。
短期的な安さにつられて購入すると、修理費・下取り損・安全性の低下という三重苦に陥るリスクがあります。
中古車を購入する際は、
- 匂い・シートベルト・下回りのチェックを自分でも行う
- 車両保険に必ず加入する
- 信頼できる販売店・専門業者で購入する
この3点を徹底し、「本当に安全な1台」を選びましょう。


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